品質工学ツール Advance/JIANT
JAXA(宇宙航空研究開発機構)安全・信頼性推進部様は、2015年より、品質工学の考えを改良し、CAEツール(シミュレーションツール)と連携して利用可能な品質工学ツール「JIANT (JAXA Integrator for Analysis Tools)」を開発されました。
この度、JAXA様より知的財産の実施許諾をいただき、Advance/JIANT として事業展開いたします。
品質工学とセットベース設計
JIANTは、ロバスト設計(環境のバラつき、製造のバラつきなどの外乱に耐性をもつ設計)を行うことを目的としたツールです。自動車・電機業界で広く使われている品質工学のパラメータ設計手法と、パラメータ成立範囲を算出するセットベース設計手法の2つの手法を融合・発展させたツールです。
多水準直交表を用いた網羅的な計算を行うことで、非線形CAEにおいて高精度なロバスト設計解を算出することが可能であり、必要な制約条件を満たすように機能や部品の個々の設計パラメータの成立範囲を算出することが可能です。
Advance/JIANT上でのPDCAサイクル
Plan、Do機能 | Pre画面(データ蓄積) 多水準直交表による入力データの作成、シミュレーションの自動実行、結果回収 |
Check、Action機能 | Post画面(デ-タ可視化) 制御因⼦と誤差因⼦の両⽅について要因効果図による感度評価 |
Post処理では、機械学習アルゴリズムのひとつである GBDT (Gradient Boosting Decision Tree) とベイズ最適化を用いて、設計変数の半・自動絞り込みを実現しています。
この推定を参考として、次の設計サイクルの水準の範囲を絞り込むことが可能です。また、入力パラメータの範囲を変更することで、変更した状況で得られる要因効果図を推定し、重ねてプロットする機能があります。
品質工学
品質工学(パラメータ設計)とは、設計におけるロバスト性を実現するため最適化手法であり、設計パラメータ(制御因子)を最適化することによって、ばらつきの原因(誤差因子)に対して影響を受けにくい設計を実現する手法です。
いろいろな設計パラメータに対して、誤差因子によって揺さぶりをかけて、最も安定な設計条件を見つける、というのが基本的な考え方です。また、設計パラメータのいろいろな組合せ条件を「直交表」に則って実験することで、試行回数の大幅削減により実験能率の向上を図っています。
セットベース設計
従来の企業が採用している、製品開発の構想段階で設計パラメータを決めてしまい、製品全体の試作・検証・修正を繰り返すことで開発のゴールを目指す方法は「ポイントベース設計」と呼ばれます。一見、製品の実体を伴うため、開発日程が早まると考えがちであるが、一度問題が出ると、問題が複雑に絡み合っていて、一つを治せば別の問題が新たに出るなど、いわゆるモグラたたき状態になりやすいです。
一方で、セットベース設計は、ミシガン大学のウォード・アレン博士らが提唱した設計変数、性能を範囲集合で表現し、多くの性能の範囲共通集合を満足するように、設計変数の範囲集合を絞り込む設計手法です。ターゲットとする製品の各機能や各性能などを、部分的に細かく検証しながら、未知の知識を積み上げて行き、個々の部品やユニットの必要な技術、必要な条件を満たすことを確認し、それらを統合することで製品開発を進める方法です。
販売・受託解析・受託開発に向けて
本製品の主要な販売先・受託先としては、国内の自動車関連、建設関連、産業用ロボット、機械、材料、製薬メーカー等や、国内の大学などの教育機関等を対象に考えています。アドバンスソフトは2002年の創業以来、スーパーコンピューターとデジタルエンジニアリングの活用を念頭に事業拡大を続けており、長年お取引いただいている設計部門の顧客ユーザ様に対し、「品質工学ツールAdvance/JIANT」の新規導入や既存製品からの置き換えのアプローチを行います。
またアドバンスソフトが開発・販売している各種CAEソフトウェア(流体、構造、音響、電波・電磁波など)と連携したパッケージ販売や受託解析や、他社の商用ソフトウェアなど、実行制御対象となるシミュレータとのインターフェイス連携の開発サポートを行います。特に導入当初における環境構築や計算実行、入出力データ作成などのサポートのみならず、既存シミュレーション業務との共存を目指し、技術障壁を減らして、徐々に浸透していくように導入企業へのサポートを手厚く行います。
動作環境
OS: Windows 10, 11
Micosoft Excelがインストール済み