薄膜成長プロセスシミュレータ Advance/TFLAGS
薄膜成長プロセスシミュレータ Advance/TFLAGS
Thin Film Atomistic Growth Simulator
薄膜成長プロセスシミュレータの特徴
本シミュレータの特徴は以下のようなものです。
- ガラス基板等の非晶質構造をもつ基板上における、多結晶膜の成長過程に対応。
- 各結晶粒ごとに膜厚分布の偏差を計算し、その時間変化を調べることで、元素の供給率や基板温度などの成長条件と表面の粗さとの関係の、統計的な解析が可能。
- 金属表面上における金属元素の拡散に特有な、エッジ拡散の効果と、Ehrlich-Schwoebel障壁の効果を導入。
- 基板上を自由拡散する同種の原子2個が衝突した場所を基点に、3次元アイランドがダイナミカルに生成されるように、オブジェクト指向言語C++を使ってコードを作成。
- 消費メモリーが100MB以下の軽いプログラムで、PCでも動作可能。
薄膜成長プロセスシミュレータの主な過程
本シミュレータで扱う主な過程は、以下の5種に大別されます。
- 外部からの原子の供給(deposition)
- ガラス基板上における原子の自由拡散
- 結晶格子のダイナミカルな生成と消滅
- ガラス基板上を自由拡散する原子の、結晶格子への取り込み
- 結晶格子上での原子の拡散
原子の供給過程では、KMC法のアルゴリズムにより、複数の供給元素の中から、入力値として与えられたフラックスに応じて、予め供給する元素の種類が確率的に選択されます。 ガラス基板に到達した原子は、自由拡散を行なうものとします。 自由拡散する原子2個が、予め設定された、相互作用の働く距離内にまで近付いたときには、それらが結合してダイマーを構成するものとし、この2個の原子の組合わせを基点として、その周囲に二次元正方格子を構成します。
こうして生成された結晶格子を構成する原子の直上や最近接サイトに、元素の供給源から供給された原子や、ガラス基板上を自由拡散する原子が到達した場合には、それらの原子は結晶格子に取り込まれるものとします。 また、各結晶格子上での原子の拡散は、最近接サイト間のホッピングとして扱うものとします。 これらの過程のいずれかが、KMC法のアルゴリズムにより選択されると、各原子の状態や位置座標等の情報が更新され、シミュレーション上の経過時間が計算されます。
活性化エネルギー
活性化エネルギーとしては、次のようなものを考慮しています。
- 表面原子への、一段下の原子層に位置する原子との結合(バックボンド)の寄与
- 格子上の同一原子層の最近接サイトに位置する原子からの結合の寄与
- 金属原子に特有の、エッジに沿った拡散障壁
- Ehrlich-Schwoebel障壁(金属表面上の金属原子の拡散の場合)