自動車用圧縮水素容器の急速充填シミュレーション

背景

次世代自動車用燃料として水素が注目されており、燃料電池車、水素燃料自動車等の開発が鋭意進められています。これらの自動車の普及にあたっては、水素の供給が課題になっており、水素ステーションの整備とともに、車載容器への水素の急速充填が課題となっています *1)。

*1) 木枝,田村,三石,渡辺,"自動車用圧縮水素容器の急速充填シミュレーション",自動車研究,vol.30-no.6,pp.287-290(2008)

アドバンスソフト株式会社では、財団法人 日本自動車研究所のご協力のもとにアドバンス版 流体解析ソフトウェアAdvance/FrontFlow/red(AFFr) を用いて「自動車用圧縮水素容器の急速充填」に関する非定常数値シミュレーションを行いました(図1)。

本シミュレーションでは、容器外壁の複数固体間の伝熱を考慮し、実在気体モデルを用いて急速充填時(図2)における容器内の流れ場、温度場の非定常特性を明らかにしました。

容器内の代表点における温度について実験値と比較した結果、本シミュレーションは比較的良好に実験値を再現していることが明らかにされ(図3)、圧縮水素容器の急速充填に関する本ソフトウェアと計算方法の実用性が確認されました。本ソフトウェアおよび計算方法は、水素容器への急速充填に関する最適な利用方法の検討に対して有用なツールになるものです。

解析条件

CFDコード:Advance/FrontFlow/red ver. 4.0
乱流モデル:LES,標準Smagorinskyモデル
数値スキーム
「計算事例」
:2次中心差分(数値安定のため5%の1次風上差分付加)
計算条件:流入質量流量:8.3x10-3(kg/s)
格子数:約12.7万要素(6面体),
dt=1.0e-3
実在気体の状態方程式:Soave-Redlich-Kwong
図1:容器モデル形状

解析結果

図2:圧力の時間発展(実在気体)
図3:温度の時間発展(実在気体)
(実験値:中心中央値)

謝辞

本事例は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「水素社会構築共通基盤整備事業」の一環として財団法人 日本自動車研究所(JARI)より受託した解析結果の一部です。

アドバンスソフト株式会社は、東京大学生産技術研究所 計算科学技術連携研究センター「文部科学省ITプログラム:戦略的基盤ソフトウェアの開発プロジェクト」並びに「文部科学省次世代IT基盤構築のための研究開発:革新的シミュレーションソフトウェアの研究開発プロジェクト」に参加し、ソフトウェアFrontFlow/redの開発を担当しました。その成果を独自に改良して商用パッケージソフトウェアAFFrとし、販売保守を行っています。

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