流体解析ソフトウェア Advance/FrontFlow/red Ver.5.4 の新機能・改良点
複雑な形状を効率よく表現できるポリヘドラルメッシュに対応
六面体、四面体、三角柱、四角錐に加えて、多面体要素(ポリヘドラルメッシュ)の利用が可能となりました。多面体要素を使用することで、複雑な形状を効率よく表現することができます。
また、メッシュ品質のバラつきが少なく、セル中心法を使用することで、計算安定性と精度の向上が期待できます。前処理は、FieldView 形式、後処理は FieldView 形式と VTK 形式に対応しています。他のメッシュ形式についてもカスタマイズにて対応可能です。
統計的手法を考慮した乱流流入速度の作成機能を追加
流入境界条件の速度場として、統計的手法を考慮した乱流速度場を与える機能を追加しました。複数の入力形式に対応しており、入力値から乱流エネルギーと混合長を使って、乱流速度場を作成します。
また、レイノルズ応力の非対角項を与えて速度相関を考慮することもできます。図2は、その適用例です。本機能を使用することにより、一定値に擾乱を加えた場合よりも、流れが発達するまでの助走距離を短くすることができるため、計算時間の短縮につながります。
スライディング境界を含む計算の高速化
スライディング境界における内側と外側のデータ交換に必要なペア探査アルゴリズムの改良を行いました。探査アルゴリズムでは、ペア探査が必要な空間を階層的に分割した木構造で分けています。
N個のコントロールボリュームの探査が必要な場合、Ver. 5.3 では N2 の演算が必要でしたが、Ver. 5.4 では木構造を用いることで、N log N の演算で済みます。これは、N=1000 のとき、演算量が約100倍違うことを意味しています。
図3は、Ver. 5.3 と Ver. 5.4 の回転角柱周りの流れのLES解析の計算時間(並列数が6で10 step 当たり)の比較です。赤がペア探査時間、青が通信時間、緑が全計算時間です。
グラフからペア探査時間が 100分の1に、全体計算時間では2割程度高速化されていることが分かります。通信時間の差が僅かですが、これはモデル規模や並列数が小さいためです。約1000万要素のモデル(並列数は24)では、通信時間に3倍程度の差が見られました。
後処理時に対象とする物理量を抽出する機能
可視化用のデータを作成する後処理において、対象とする物理量を抽出する機能が追加されました。例えば、速度のみで可視化用のデータを作成したり、非圧縮流れで等温変化のとき、密度と温度は可視化用のデータから除外したりすることができます。