監修小林敏雄
編集者杉中隆史 松下崇 西村香純 大西慶治
畝村毅 山田英助 張会来
定価¥3,300 (税込)
形態A5版/152頁/ソフトカバー/付録CD付
発行所アドバンスソフト
発行日2004.7.10
ISBN4-9902143-3-1
  • 本書は、FrontFlow/redをアドバンスソフト株式会社が実用化に向けて機能追加したAdvance/FrontFlow/redの基本的機能を紹介したものです。
  • FrontFlow/redは乱流現象の予測と制御が重要な課題であることの多いエネルギー流動(流れ、熱、音など)の予測シミュレーションを主な対象に、ラージ・エディ・シミュレーションを基礎とする数値解析モデリングを実用化レベルまで確立するために開発されています。ラージ・エディ・シミュレーションの他に乱流変動を時間平均したRANSモデルや層流計算の高精度化も進められています。
  • 付録としてWindows上で実行できるAdvance/FrontFlow/redのロードモジュール(ソースプログラムは含まない)と定常バックステップ流れの計算と、水素/酸素拡散火炎の素反応解析の入力ファイルを付けています。

本書について

産業生産力の維持・強化、科学技術の発展、社会生活の安全、環境保全などを支えるために、国産で世界水準の実用ソフトウェアを作るためのプロジェクトとして、2002度から5ヵ年計画で文部科学省ITプログラム「戦略的基盤ソフトウェアの開発」プロジェクトがスタートした(1)。 このプロジェクトの中で次世代流体解析グループが開発している流体解析ソフトウェアの1つがFrontFlow/redである。

FrontFlow/redは、乱流現象の予測と制御が重要な課題であることの多いエネルギー流動(流れ、熱、音など)の予測シミュレーションを主な対象に、ラージ・エディ・シミュレーションを基礎とする数値解析モデリングを実用化レベルまで確立するために開発されている(2)。 ラージ・エディ・シミュレーションの他に乱流変動を時間平均したRANSモデルや層流計算の高精度化も進められている。

FrontFlow/redの適用が期待される工学問題の代表的なものとして、 1)熱エネルギー流動、 2)流体騒音/流体振動、 3)複雑な流体現象(ex. 混相流、反応流など)が挙げられる。ラージ・エディ・シミュレーションに基づく非定常乱流解析は、 これらの最近の工学設計における共通の課題に対して、より普遍的、汎用的な予測法を提供し、新しい課題に対しての先行的な技術開発を可能にすることが期待される(2)。

本書は、FrontFlow/redをアドバンスソフト株式会社が実用化に向け機能追加したAdvance/FrontFlow/redの基本的機能を紹介したものである。本書により、Advance/FrontFlow/redの基礎方程式、境界条件、数値解法、入出力ファイルの基本部分を知ることができる。

付録としてWindows上で実行できるAdvance/FrontFlow/redのロードモジュール(ソースプログラムは含まない)と定常バックステップ流れの計算と水素/酸素拡散火炎の素反応解析の入力ファイルを付けているので、実際に計算を行うことによってAdvance/FrontFlow/redを深く理解することができる。

[参考文献]
(1) 小林敏雄: "文部科学省ITプログラム「戦略基盤ソフトウェアの開発」の目指すもの",生産研究55-632(2003), p239.
(2) 谷口,加藤,筧,張: "次世代流体解析システム",生産研究55-632(2003), p265.

付録CD
付録CDには、カラー図集とアニメーションが納められています。

水素/酸素拡散火炎の素反応解析の例

解析モデル

解析対象は一般的な円管の同軸型バーナーによる噴流拡散火炎である。 素反応モデルには、Gutheilらの9化学種、21素反応式(一部で不可逆反応) のモデルを用いる。
粘性係数、熱伝導率および拡散係数の近似モデルには、Smookeらによる 簡略化輸送係数モデル(simplified transport model)を用いる。
また、定圧比熱、エンタルピーの計算は温度の多項式として近似したモデル を用いる。

速度分布

水素と酸素が混合するバーナー近傍では、反応が最も活発であるため、その熱 の発生に伴う大きな体積膨張から、速度は最大値を示す。そして下流にむかって 速度は序所に減少する。

OHの密度分布

OHの密度は、水素と酸素が混合して活発は反応が生じていると考えられる領域 で多くなっている。これは火炎の反応帯で、一般的な拡散火炎によくみられるよう に火炎周囲に薄く広がる様子を表している。

H2Oの密度分布

反応帯付近において多量に生成されたH2Oが空間的に拡散する様子が示されて いる。最終生成物であるH2OはOHと違って安定な化学種であるため、高温領域 での熱解離現象以外では基本的に他の化学種に変化することなく、H2Oそのまま で空間的に拡散していく。

目次

1. 次世代流体解析Advance/FrontFlow/redとは

2. Advance/FrontFlow/redの基礎方程式

  • 2.1 質量保存方程式
  • 2.2 運動量保存方程式
  • 2.3 化学種の質量保存方程式
  • 2.4 状態方程式
  • 2.5 エネルギ方程式
  • 2.6 物性値と輸送係数
  • 2.7 低マッハ数流れ
  • 2.8 標準k-εモデル
  • 2.9 ラージ・エディ・シミュレーション
  • 2.10 総括反応モデル
  • 2.11 渦消散モデル
  • 2.12 素反応モデル

3. Advance/FrontFlow/redの境界条件

  • 3.1 壁法則
    • 3.1.1 メッシュサイズ
    • 3.1.2 速度の壁法則
    • 3.1.3 質量と温度の壁法則
    • 3.1.4 標準k-εモデルの壁法則
  • 3.2 速度の境界条件
    • 3.2.1 入口の流入条件
    • 3.2.2 出口の流出条件
    • 3.2.3 対称面と壁面のFree-Slip条件
    • 3.2.4 壁面のNo-Slip条件
    • 3.2.5 壁法則
  • 3.3 温度の境界条件
    • 3.3.1 入口の流入条件と壁面の温度固定条件
    • 3.3.2 出口の流出条件と壁面の断熱条件
    • 3.3.3 壁面の熱流束固定条件
    • 3.3.4 壁法則
  • 3.4 化学種の境界条件
    • 3.4.1 入口の流入条件と壁面の質量分率固定条件
    • 3.4.2 出口の流出条件と壁面の法線勾配ゼロの条件
    • 3.4.3 壁面の質量湧き出し/吸い込み条件
    • 3.4.4 壁法則
  • 3.5 標準k-εモデルの境界条件
    • 3.5.1 入口の流入条件
    • 3.5.2 出口の流出条件と壁面の法線勾配ゼロの条件
    • 3.5.3 壁法則
  • 3.6 ラージ・エディ・シミュレーションの境界条件
    • 3.6.1 入口の流入条件
    • 3.6.2 出口の流出条件
    • 3.6.3 壁法則

4. Advance/FrontFlow/redの数値解法

  • 4.1 メッシュと変数配置による高精度化
  • 4.2 対流項の高精度化
    • 4.2.1 1次風上差分
    • 4.2.2 2次中心差分
    • 4.2.3 TVD 2次風上差分
    • 4.2.4 TVD 3次風上差分
  • 4.3 勾配および拡散項の高精度化
  • 4.4 時間積分の高精度化
    • 4.4.1 SMAC型陽解法
    • 4.4.2 SMAC型Euler陰解法
  • 4.5 行列解法
    • 4.5.1 ICCG法
    • 4.5.2 Bi-CGSTAB法

5. 入出力ファイル

  • 5.1 入出力ファイル一覧
  • 5.2 計算制御ファイル
    • 5.2.1 変数群名
    • 5.2.2 変数群名boundary
    • 5.2.3 変数群名cgsolver
    • 5.2.4 変数群名chemcntl
    • 5.2.5 変数群名chemreac
    • 5.2.6 変数群名ebug
    • 5.2.7 変数群名deltat
    • 5.2.8 変数群名dimension
    • 5.2.9 変数群名files
    • 5.2.10 変数群名flags
    • 5.2.11 変数群名fluid
    • 5.2.12 変数群名gravity
    • 5.2.13 変数群名hpc
    • 5.2.14 変数群名hpc_cntl
    • 5.2.15 変数群名initial
    • 5.2.16 変数群名kemodel
    • 5.2.17 変数群名les
    • 5.2.18 変数群名model
    • 5.2.19 変数群名output
    • 5.2.20 変数群名scalar
    • 5.2.21 変数群名simple
    • 5.2.22 変数群名sizes
    • 5.2.23 変数群名solid
    • 5.2.24 変数群名source
    • 5.2.25 変数群名species
    • 5.2.26 変数群名time
    • 5.2.27 変数群名usrsub
  • 5.3 ソース領域ファイル
  • 5.4 初期値ファイル
  • 5.5 リスタートファイル
  • 5.6 計算結果ファイル
  • 5.7 HPC並列計算ファイル
    • 5.7.1 頂点ファイル
    • 5.7.2 境界領域ファイル
    • 5.7.3 初期値ファイル
    • 5.7.4 リスタートファイル
    • 5.7.5 計算結果ファイル

6. 例題実行

  • 6.1 稼動環境
  • 6.2 インストール
  • 6.3 定常バックステップ流れの計算
    • 6.3.1 計算の概要
    • 6.3.2 入力ファイル
    • 6.3.3 実行方法
    • 6.3.4 計算結果
  • 6.4 水素/酸素拡散火炎の素反応解析
    • 6.4.1 計算の概要
    • 6.4.2 入力ファイル
    • 6.4.3 実行方法
    • 6.4.4 計算結果
    • 6.4.5 Appendix-素反応との連成

付録 CD-ROMの内容(Windows版ロードモジュール)